西洋古典学とデジタル・ヒューマニティーズ
DH 2022 Tokyo Commemorative Lecture Series
2022年6月15日(水) 19:00-20:30 西洋古典学とDH(逐次通訳)【終了】
ペルセウスデジタル図書館
The Perseus Digital Library
1987年から継続的に開発され、1995年からはオンラインのデジタルライブラリーとして公開されているペルセウスデジタル図書館は、デジタル・ヒューマニティーズの分野で最も古いプロジェクトの一つである。毎月何十万人ものユーザーに利用されているペルセウスでは、もっともよく知られているのはそのギリシャ・ラテン文化に関する蓄積だが、古典アラビア語やペルシャ語、古英語、19世紀のアメリカ文化、ロンドンの歴史と地形など、多くのトピックにも取り組んでいる。ペルセウスは、人間の記録が果たしうる役割を強化するための、新しいデジタル手法の形態と可能性に関する一連の実験を継続的に行っている。本講演では、ペルセウスの起源、その核となる戦略的決定、現在の活動、そして将来への展望を振り返りる。
Under continuous development since 1987 and visible as an online Digital Library since 1995, the Perseus Digital Library is one of the oldest continuously operating projects in the Digital Humanities. Reaching hundreds of thousands of users each month, Perseus is best known for its holdings on Greco-Roman culture but it has worked on many topics such as Classical Arabic and Persian, Old English, 19rh century American culture, and the history and topography of London. Perseus is an on-going set of experiments in the form and possibilities of new digital methods to enhance the role that the human record can play. This talk reflects on the origins of Perseus, its core strategic decisions, its current work and prospects for the future.
講師:Gregory Crane, Editor in Chief, Perseus Digital Library/ペルセウスデジタル図書館編集長
Gregory Craneの関心には二つの方向性がある。一つには、古代ギリシャの作家について幅広く発表している(ギリシャ演劇やヘレニズム詩に関する論文、オデュッセイアに関する本など)。伝統的な学術研究の多くはトゥキディデスに捧げられており、彼の著書『盲目の眼』(The Blinded Eye: 1996年には『The Blinded Eye: Thucydides and the New Written Word』がRowman and Littlefield社から出版され、1998年には『The Ancient Simplicity: Thucydides and the Limits of Political Realism』がUniversity of California Press社から出版された。
同時に、人文科学と急速に発展するデジタル技術の関係にも長年関心を寄せてきた。ハーバード大学の大学院生だった1982年の夏、古典学部が初めてTLG (Thesaurus Linguae Graecae) authorsを磁気テープで購入したときから、この方面の仕事を始めました。1980年代半ばには、北米とヨーロッパで広く利用されたTLGのUnixベースの全文検索システムを開発しました。また、学術出版を促進するためのタイプセッティングコンソーシアムの設立にも貢献した。1985年からは、ペルセウス・プロジェクトの企画・開発に従事し、編集長として指揮をとっている。ペルセウスプロジェクト全体の監修のほかにも、ペルセウスデータベース内の多くのリンクを提供する形態素解析システムの開発を主に担当してきた。
1998年から2006年まで、デジタル・ライブラリー・イニシアチブの助成を受け、人文科学の分野におけるデジタル・ライブラリーの一般的な課題の研究を推進した。DLI-2プログラムのもと、ロンドン、メカニックの歴史、アメリカの南北戦争など、さまざまなトピックに取り組んだ。これらのコレクションはそれぞれ、このような新しい電子ツールが学習に与える影響について新しい洞察を与えてくれた。2006年には、固有表現識別システムを制作し、5500万語のコレクションを出版し、そのシステムを解説するいくつかの出版物を執筆した。
2004年のGoogle Booksプロジェクトの立ち上げとともに、精選されたコレクションではなく、図書館全体がオンラインで利用可能になったときに生じる問題と可能性に注目し始めた。DLI-2プログラム、Institute for Museum and Library Services、Mellon 財団の支援を受けて行った幅広いプロジェクトは、ペルセウスにおける古典研究に関する現在の世代の研究プロジェクトを構成するための幅広い基盤となった。Craneは、ペルセウスでの研究プログラム全体を統括している。
Craneが特に関心を持っているのは、人文科学全般、特に古典研究のニーズに対応したサイバーインフラストラクチャーの立ち上げである。
(http://www.perseus.tufts.edu/hopper/about/who/gregoryCrane より)
2022年6月15日(水) 19:00-20:30 西洋古典学とDH 【終了】
コメンテイター:吉川斉(よしかわひとし)
成城大学文芸学部准教授。博士(文学)。専門は西洋古典学、古典受容。著書に『「イソップ寓話」の形成と展開』(知泉書館、2020年)。東京大学大学院人文社会系研究科特任研究員、助教を経て、2022年4月より現職。
以前より(主にユーザーとして)Perseusライブラリーを眺めていたところ、縁あって2014年に『人文情報学月報』にてPerseusプロジェクトおよび電子版Loeb古典叢書の紹介記事を連載する機会をいただくこととなり、さらに、それらの記事の更新版が、「Perseus Digital Library:人文情報学の先駆的図書館」「The digital Loeb Classical Library:西洋の古典文学叢書の電子版」として、『欧米圏デジタル・ヒューマニティーズの基礎知識』(文学通信、2021年)に所収されました。現在、参加する共同研究プロジェクトの一環で、「東京大学ギリシア悲劇研究会」関連資料のデジタル化を行うべく試行錯誤中です。
企画:一般財団法人人文情報学研究所