3Dとデジタル・ヒューマニティーズ
DH 2022 Tokyo Commemorative Lecture Series
2022-07-08 (金)18:00-19:30 3Dとデジタル・ヒューマニティーズ 【終了しました】
講師:Susan Schreibman
Susan Schreibmanはマーストリヒト大学デジタル芸術文化教授である。デジタルアーカイブ、文化の革新、参加型エンゲージメントのデザイン・プロセス・プロジェクトの相互作用において、コンピュータベースの教育研究の交差点を仕事の場としている。研究の焦点は、アナログ世界からの出版様式や原稿文化を再定義するシステムの設計、批判、解釈分析であり、同時に新しいボーンデジタルなパラダイムを開発することである。Schreibman教授の現在の研究プロジェクトは以下の通りである。PURE3D、Contested Memories(争われた記憶)。マウント・ストリート・ブリッジの戦い」、#dariahTeach。
Susan Schreibman is Professor of Digital Arts and Culture at Maastricht University. She works at the intersections of computationally-based teaching and research in the interplay of the digital archive, cultural innovation, and participatory engagement design, processes and projects. A focus of her research is in the design, critical, and interpretative analysis of systems that remediate publication modalities and manuscript culture from the analogue world, while developing new born-digital paradigms. Professor Schreibman’s current research projects include: PURE3D, Contested Memories: The Battle of Mount Street Bridge, and #dariahTeach.
3Dデジタル学術編集版:オブジェクトとしてのテクスト
"3D Digital Scholarly Editions
The Text as Object"
2022-07-08 (金)18:00-19:30 3Dとデジタル・ヒューマニティーズ 【終了しました】
書き言葉を確定し、そこに注釈を施すという伝統は幾世紀にもわたって存在するものです。そして、デジタル学術研究の最初にして未だに重要な領域の一つは、デジタル学術編集版の作成です。しかし、もし私たちが、仮想世界の何らかの対象や仮想世界全体の3Dモデルとして注釈対象となるテクストを考えるなら、何が起きるでしょうか。注釈と文脈化の対象が、書き言葉から、何らかの3Dモデル、すなわち、(彫刻から建造物、都市に至るまで)既存の対象を表現したものから、(古代遺跡の基底部や陶片のように)私たちが有する断片的なものを(再)創作したものに至る、何らかの3Dモデルへと移行した時、セマンティックな領域はどのようなものになるのでしょうか。たとえば、戦闘中に何が起こったのか(あるいは起こったかもしれないのか)、中世の教会の聖歌隊が数世紀をかけて再建され再構築される前にどのような音を出していたのかを理解するためにAIを活用するような、探索的、分析的、あるいはインタラクティブな注釈が行われるとき、3D世界に注釈を付与することは何を引き起こすでしょうか。このような学術研究を保存し、将来にわたり保証するためには、何が必要なのでしょうか。この講演では、約100年前にアイルランドで起きたた戦闘を題材にした3Dデジタル学術版を事例として、こういった問題の一端を探求します。
There is a centuries-old tradition of establishing and annotating the written word. And one of the first and still key areas of digital scholarship is creating digital scholarly editions. But what happens if we think of the text to be annotated as a 3D model, either a model of an object or of an entire virtual world. What does the semantic field look like when we shift from annotating and contextualizing the written word to annotating and contextualing 3D models of anything from (re)presentations of extant objects (from sculpture, to buildings, to cities) to (re)creations of objects that we only have in fragmented form (such as foundations of ancient buildings or shards of pottery). What does annotating a 3D world entail when the annotation is exploratory, analytical, or interactive, such as the utilizing AI to understand what transpired (or what might have transpired during a battle) or how a choir in an mediaeval church sounded before centuries of rebuilding and reconstruction. What do we need to preserve and to future proof such scholarship? This talk will explore these issues , in part, using as an example a particular 3D digital scholarly edition centred on a battle that took place in Ireland around 100 years ago.
コメンテイター:小川潤(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)特任研究員)
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)特任研究員。修士(文学)。専門は西洋古代史(古代ローマ史)およびデジタル・ヒューマニティーズ(DH)。DHでは歴史情報の構造化に関心を持ち、知識グラフ・RDFによるデータ構造化手法を研究。主要業績として、【小川潤「一次史料における時間的コンテキストを含む社会関係記述モデルの提案と実践」『情報処理学会論文誌』(特集号)63-2、2022年、258-268頁】。最近では3D scholarly editionに関心を持ち、多次元アノテーション手法等に関する研究を行う。
講演翻訳者:笠原真理子(東京大学 連携研究機構 ヒューマニティーズセンター LIXIL潮田東アジア人文研究拠点 特任研究員)
東京大学連携研究機構ヒューマニティーズセンター特任研究員。早稲田大学総合研究機構オペラ/音楽劇研究所招聘研究員。専門はベル・エポック期のフランスオペラ・音楽劇における舞台演出とミュージカル。現在取り組んでいるその他の研究テーマは、オペラ漫画及びオペラにおける香りの表象。舞台芸術のデジタルアノテーションとその活用方法に関心を持つ。https://researchmap.jp/massenet9814237
企画:中村雄祐(東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究室)
東京大学 連携研究機構 ヒューマニティーズ・センター公募研究「デジタル技術を用いた文化資源の多次元アノテーションの研究」代表。現在の主な研究課題:汎用技術と社会変化。
近年の主な論文:
Kozaki, Tomomi, Yusuke Nakamura. "The Evolving Life Improvement Approach: From Home Taylorism to JICA Tsukuba, and Beyond". Psychosociological Issues in Human Resource Management 6, no. 1 (2018年). https://doi.org/10.22381/PIHRM6120186.
Nakamura, Yusuke, Chikahiko Suzuki, Katsuya Masuda, & Hideki Mima. "Designing Research for Monitoring Humanities-based Interdisciplinary Studies: A Case of Cultural Resources Studies (Bunkashigengaku 文化資源学) in Japan". Journal of the Japanese Association for Digital Humanities 2, no. 1 (2017年). https://doi.org/10.17928/jjadh.2.1_60.
解説者:
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)
一般財団法人人文情報学研究所主席研究員。日本学術振興会人文・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業センター研究員(PO)。国文学研究資料館客員教授。筑波大学大学院博士課程哲学・思想研究科単位取得退学。博士(関西大学・文化交渉学)。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所COE研究員、山口県立大学国際文化学部助教授等を経て一般財団法人人文情報学研究所の設立に参画。これまで各地の大学研究機関で文化資料のデジタル化と応用についての研究支援活動を行ってきた。学会関連活動としては、情報処理学会論文誌編集委員、日本印度学仏教学会常務委員情報担当、日本デジタル・ヒューマニティーズ学会議長、TEI Consortium理事等を歴任。著書に『文科系のための情報発信リテラシー』(東京電機大学出版局、2004年)、『日本の文化をデジタル世界に伝える』(樹村房、2019年)など。